神戸港開港の約50年後、大正時代に神戸で貿易商として成功していた類蔵氏が、須磨の高台に1軒の豪邸を建てました。西尾邸に招かれたのは、外国人居留地でもトップクラスの貿易商や関西の財界人、文化人、華族といった本物のセレブリティ。当時の神戸社交界において、西尾邸への招待はステイタスの証だったのです。
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総面積は約10,000m²。門構えの正門をくぐれば、緩やかな坂道のアプローチが続き、ようやく高台の頂上にセセッション様式の洋館が現れます。この壮大なランドスケープデザインに込められたのは「非日常的な世界へお招きしたい」との思い。それはそのまま、現在の神戸迎賓館へ受け継がれています。
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大正〜昭和初期の神戸において、「社交界の華」と称されたのがこの本館です(兵庫県指定重要有形文化財)。外観デザインの特徴は、平面と直線、アーチ状の窓で、当時ヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォーの流れを汲んでいます。これほど本格的なセセッション様式の迎賓館が現存しているのは、国内でもきわめて稀なことです。
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ここがハイクラスな社交場であった事実を物語るのが、贅を尽くしたエントランス。ドレスアップした貴賓を迎えることを考慮して、正面玄関の石段には暖房が仕込まれ、頭上には美しいステンドグラスが施されました。中へ入ればひと息つくためのホワイエがあり、この場所は現在、ゲストの待合室として利用されています。
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待合室は、天井の網代の意匠やレトロな照明に胸ときめく空間。さらに待合室の正面には、大きな階段が格別の存在感を放っています。靴音を受け止める深紅の絨毯、重厚な手すりの飴色の輝き、踊り場の窓のステンドグラス。その昔、夜会に招待された淑女が紳士にエスコートされて上っていく様子さえ目に浮かびそうです。
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